《インタビュー》クライアントと読者の両方に貢献できるのが最大の喜び

フリーランスのライター、編集者として活躍する浅井のぞみさんは、未経験からライターとして活動を始めて、約3年。現在は、複数の企業とコンテンツディレクターとして契約を結んでいます。

専業のライターになるには、特別なキャリアや訓練が必要だと思われる方もいるかもしれませんが、浅井さんのように「たたき上げ」で文章を書く仕事としての道を切り拓く人もいます。「クライアントに貢献したいという想いは、人一倍強いはず」と語る浅井さんに、ライターとして歩んできたキャリアを振り返ってもらいました。

(取材:藤原友亮) 

よいコンテンツを作り上げるのがミッション

自分で記事を書くだけでなく、他のライターが書いた記事を編集したり、クライアントとのスケジュール調整したり、ディレクターである浅井さんの仕事は多岐にわたります。

--ディレクターはいろんな能力が問われそうですね。

「そうですね。チームの取りまとめをする仕事なので、スケジュールを管理する力やコミュニケーション能力はもちろん大切です。私のようにライターからたたき上げでディレクターになると『プレイングマネージャ』として、自分で記事を書いたり、編集したりする力も必要です。どちらの仕事も好きですね」

--とくにご自分で得意だなと思う仕事はなんでしょうか。

「他のライターさんが書いた記事を編集するのは、自分でも強みだと思っています。文章を初見で読んだときに、『ここを直した方がよくなる』『この並びだと少し意味が伝わりづらい』など課題に気づくのが得意です。クライアントの方に『こちらが意図した通りの記事を作ってくれるのでありがたい』と評価していただくことが何度もありました。

書いた本人が自分の手で文章を改良するのは難しいものです。だから私が客観的な目で見直して、読者にとってはもちろんですが、クライアントが読んでもよい記事に仕上げることを、常に心がけています」

--出版社や新聞社で働いた経験があるのですか?

「いえ、全部独学というか特別な勉強はしていません。

最初はクラウドソーシングでライターのお仕事に応募し、記事を書いて、また応募して…の繰り返しですね。ありがたいことに記事の品質を認めていただいて、継続して仕事の依頼が来るようになり、また書きながら自分自身のスキルを高めてきたという経緯です」

英語・マーケティングなどキャリアを積んできた

ライターの仕事を始めて3年という浅井さん。そこまでには、さまざまな仕事をしてきていました。キャリアの中で身につけた英会話やマーケティングの業務経験が、ライター・編集者になってからも活かされているそうです。

--TOEICが900点台だとか。すごいですね。

「もともと英語を話せないコンプレックスが大きかったんですよ。19歳のとき、親戚に会いにオーストラリアに行ったのが英語の転機ですね。ハーフのいとこが日本語を話せなかったので滞在中に私が一所懸命、英語を勉強したんです。私は、やるなら徹底的にやるタイプなので、帰国後もマンツーマンレッスンを1年半続けてようやく自分のものにできました」

--その後、仕事に英語を活かせましたか?

「そうですね。某日本発のファストファッション企業で、海外の役員と英語でやりとりする秘書業務や、その後に勤めた文具メーカーでは英語を活かして海外向けのマーケティングの仕事にもたずさわりました。海外出張で飛び回っていた時期もあります」

--キャリアウーマンとして順調だったように思えます。

「たしかに仕事は充実していました。ただ、ちょうど結婚もして、いつまでも同じスタイルの仕事を続けるのは限界も感じ始めていたんです。それまで安全とされていた国でもテロ事件が起きるなど、治安悪化も気になっていたので退職することにしました」

退職後の浅井さんは「働き方の都合に自分を合わせる」のではなく、自宅でも働けるように自身や家族のライフスタイルを優先するようになったといいます。

行動量がともなえば仕事の質も向上する

会社員生活に別れを告げ、個人として仕事を獲得しなければならなくなった浅井さんを支えたものは、圧倒的な行動力でした。

--フリーランスとして独立したばかりの生活は?

「夫の両親が都内で学習塾を経営していて、その手伝いをしていました。私が英語を教えられるというのは義理の父には魅力的だったみたいです。学習塾は夕方から夜の仕事なので、昼の空き時間で副業としてライティングの仕事をしていましたね。そうこうするうちにライティングの仕事にすっかりハマってしまい、その後、専業ライターになりました」

--体力的にはキツそうです。よく続けられましたね。

「本当ですよね、かなりキツかったですよ。実は、先ほど話していなかった仕事がもうひとつあるんです。オーストラリアに行く直前の2年間、歩合制で訪問販売の仕事をしていたんですが、簡単にいえば1日200件の飛び込み営業です。

これで根性が鍛えられましたし、成果を出すには圧倒的な行動量がベースとして必要だと心から理解できました。私には特別な才能はないと思っています。だからこそ、行動量でカバーしてきました。量がともなえば、必ず質も向上するというのは私の経験が物語っていると思います」

もともと会社員時代から、作成した議事録やメールの文章を褒められることが多かったと浅井さんは振り返ります。

しかし短期間でライターとしてのスキルを高め、さまざまなの法人から難易度の高いディレクターを任されるようになった背景には、持ち前のハードワークがあったのです。

仕事は私にとって本当に大切なもの

ライター、編集者、ディレクターと役割は違っても、共通するのは「発注者であるクライアントのためによいコンテンツを作ること」だと浅井さんは指摘します。自分の働きが、クライアントのためになるというスタイルが、自身の喜びにつながっているそうです。

--仕事でがんばれる、原動力はなんでしょうか?

「仕事があることを、本当にありがたいと思っているからです。

私は家庭環境が複雑で自尊心が低いタイプでした。人生を好転させて、自分に自信が持てるようになったのは、仕事のおかげなんですよね。高校生のときに初めてアルバイトをして、お給料をいただいたときに『人に必要とされる感動』を味わった経験は、今も変わっていません。今も大勢の中から私を選んでくれた仕事相手に対して、全力で貢献したいという想いが強くあります」

--今の仕事の話をしているときが一番楽しそうですね。

「はい、私の仕事の結果を発注者に喜んでもらえることが、私の喜びです。だから、クライアントの目線で『彼らが達成したいことは何か』『求めているものは何か』を考えて、行動するんです。クライアントの求めているレベルを少しでも上回って、期待を超えたい、驚かせたいと思っています。

幸い現在は質の高いメンバーが多数いる環境でマネジメントも任せてもらっています。今後者さらにチームとしての結果を最大化することを心がけています」チームでよいコンテンツを作り上げる過程や一体感が好きなんですよね。

--今後はどんな展望を持っていますか。

「おかげさまでSEOを意識した記事はもちろんですが、マーケティング関連のebookやホワイトペーパーなど、いろんなお仕事を依頼いただくようになりました。今後、ジャンルは問わず、幅広い仕事に挑戦したいです。私を必要としてくれるクライアントさんには、長く貢献したいですね」

浅井さんの仕事に取り組む姿勢をお聞きしていると、「仕事は高貴なる心の栄養だ」という古代ローマの哲学者の言葉が思い出されました。

仕事をできる環境に感謝を忘れないからこそ、次々と依頼が舞い込むのでしょう。「このような人と一緒に仕事をしたい」と思わせる力を言葉の端々に感じました。

<取材後記>

頭の回転が速く、自分の得意なパターンをしっかりと確立している人というのが、浅井さんとお会いしたときの印象でした。その背景には「超」がつくほどの泥臭い営業経験や自分のスキルアップに対するこだわりがありました。「ノウハウやテクニックを学ぶのも悪くないけれど、それより実戦経験を通じてうまくなった方が近道」という考え方は、多くのライターにとって参考になると思います。

取材:藤原友亮

NHKでの番組制作や大手イベント会社での法人営業、マネージャ職を経て2022年からフリーランスライターとして独立。医療やビジネス系のインタビュー記事を多く手掛ける。読者の行動変容を促すライティングを得意とする

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